2014年2月13日木曜日

その病気になったことがないのに気持ちがわかるの?

「先生はこの病気になったことがありますか?」

患者さんに聞かれることがあります。この時僕は「なったことはありません」と素直に認めるようにしています。それ以上何も言いませんし、無駄な抵抗はしません。

実際のところ、この問へは医者になってから僕自身、自問自答してきました。僕はその病気になったことがないのに自分には何がわかるんだろう。これまた、自分がいやになる瞬間です。でも病気の人に対峙して、治療していくのが僕の仕事です。しかも自分が経験したことがないのに知ってるふりをすることは嫌いですし、自分が患者さんの気持ちを100%は理解できていないという姿勢から治療は始まると思っています。そしたら自分はどうしたらいいのか。

今現時点で僕が思う結論が2つあります。

1つは医者は基本的には健康であることが大切だということです。
たとえば、僕があらゆる精神疾患の経験があるとします(現実的には困難ですが)。そうすると患者さんの気持ちがわかってよく治療ができるのか。もちろん気持ちに共感しやすいというのは大きな武器です。でもよく考えてみたら、そもそも患者さんはそんな健康でない医者に診てもらいたいと思うでしょうか。この世に全く健康体な人は僕はいないと思っています。ただ、大きな問題を抱えた患者さんに対峙して、治療するためには基本的に心身ともにある程度自分が健康でないと立ち向かえません。

もう1つは患者さんの気持ちがわかることと、治療できることは違うと考えています。
気持ちがわかって「そうですよねー」としみじみ自分の経験と突き合わせていくことはできるでしょう。ただいくら共感ができても治せるとは限りません。やはり患者さんを治すには技術というものが必要だと思うからです。いつも言うことですが、精神科医は単に人生経験が豊富な町のおばちゃん(僕はおっちゃんですが(笑))ではいけないと思っています。患者さんに自分の人生論をいくら披露しても治療はできません。

この2つのことから自分の健康を維持しながら、精神療法の技術を向上させることが今の自分にできることではないかと考えています。

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