日本で一番大きな精神科の学会が札幌であり、この学会では14年ぶりに発表をした。学会発表には大きく2つあり、一つは口頭発表、もう一つはポスター発表である。
今回ポスター発表をすることになり、背の低い僕が横幅90㎝、縦幅150㎝のポスターを椅子に上って一人で貼っていた時のことだった。見知らぬ男性が来られて「一人で大変ではないですか?お手伝いしますよ」と声を掛けてくださった。思わず「こんな優しい方がおられるんですね」と口走ってしまった。僕がポスターを持ち、その方が画鋲をご自分の掌に載せて横に立ってくださった。ポスターの前で写真まで撮ってくださった。名札を見るとその方はある製薬会社の社員さんだった。でもそこには何の打算もなく、ただ人を助けるという姿勢が感じられた。
お礼を言って別れたあと、会場を歩いているとさっきまでの僕と同じように一人でポスターを貼っている方を見かけ、僕はすぐに駆け寄りお手伝いすることにした。
もしあの方にお会いしなかったら、すぐに駆け寄ったりしただろうか。僕の人格レベルでは疑わしい。人に助けていただいたおかげで、僕もほかの人を助けたいと素直に思えた経験であった。