その看板を見てから道を進んでいくと、明らかにさっき体外に排出されたばかりの湿った動物の糞が道に落ちているのが目に入りました。一度それに気づいてしまうとどんどん目に入ってきて、周囲にいくつもあることに気付きました。ふと振り返ってそれまで歩いてきた道を見ると、道路の上に小さな黒い緑のかたまりが点在していたのです。朝が早いのでそれまでの道中誰にも会っておらず、当然周りに人影はありません。次の瞬間、ササっと音がしました。でもそっちを見ることができません。周囲の林にある笹が揺れていたのでした。ようやく頭を上げて辺りを見渡しても何もいません。斜め後ろから冷たい風が僕をからかうように吹きつけます。それでも横に流れる美しい梓川を見ているとどうしても河畔を歩きたくなって、勝手に足が前に行こうとします。頭ではこれ以上進んではいけないとわかっているのに。そのときでした。後ろから車が何台か連続で来てくれたのです。普段は歩いているときに車が来てもそのまま気にせず歩き進めるくせに、このときばかりは車が来てくれた、人がいてくれたことがありがたくて、立ち止まって道をしっかりと譲りました。すると運転手さんが頭を下げてくれました。僕は思わず、その人より深く頭を下げたのでした。
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。