2024年4月19日金曜日

生きるとは手放すこと

毎週楽しみにしている日経新聞の若松英輔さんの連載「言葉のちから」にこんな文章がありました。

生きるとは何かを得ることだと思っていた。今は、生きるとは手放していくことのように感じている。

僕も人生が進んでいくとモノを得て、知恵を得て、家族を得て、ずっと得ていくものだと思っていました。でも老眼が始まって見えないことを受け入れざるを得なくなった。体力任せな行動はとらなくなった。したいことがあっても睡眠を優先するようになった。会うかどうか迷う人には会わなくなった。子どもたちは巣立っていく。手放したくなくても勝手に手放すようになっていくのです。ただ、手放すことは決して嫌な感覚ではなく、むしろ身軽になっていく実感があります。ぼんやりしていた人生のフォーカスがどんどん合っていく感覚です。手あたり次第に広げていた好奇心はかなり収束して、数少ないいくつかのことに集中するようになりました。以前は許せなかったことが自然に許せるようになりました。いいことばかりではありませんが、トータルではとても幸せだと感じています。今の僕が「手放す」ことのすべての意味を理解しているとは思えませんが、死が来れば否が応でも物理的なものはすべて手放すことになります。生きることは手放すこと。人生を見事に表した至言であると思います。

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