2018年4月27日金曜日

僕が治せない人はいます

NHKのプロフェッショナルの中で、将棋の永世7冠の羽生善治さんが、こんなことをおっしゃっていました。

(その負けが)自分の形になるのなら、一つや二つ負けるのは苦にならない

僕はこの言葉を聞いた時、人の治療をしている自分にはこれはあってはいけないことではないかと思い、やはり将棋と精神科治療は違う部分があると思いました。ただ、その後しばらく考えていると、そうでもないのかなと思い始めました。決して後ろ向きな意味ではなく、治療をさせてもらっても僕が治せない人は必ずいます。特に以前は今よりもたくさんいました。精神科治療を勝ち負けで表現するのが正しいかは別にして、治せないということは勝ち負けで言えば「負け」です。現役の精神科医が治せないなんて言葉を口にすることが許されるのかどうかはわかりません。ただ、それがある確率で生じるのなら、それを生かして、自分の肥やしとして自分の治療の形を作り、次の治療に生かして、治せない患者さんを限りなくゼロに近づけていくことが精神科医として自分が目指すところだと考えています。それが羽生さんのおっしゃっていることと同じ意味を持つのではないか。やはり将棋と精神科治療は似ているのではないかと考え直しました。自分の治療の形を作るために、負けても続けていきたいと思います。

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