2019年10月25日金曜日

人の温かさに触れる

先日のNHKの逆転人生は中国の大学で日本語を教えている笈川幸司さんでした。お笑い芸人として花が開かずひょんなことから中国で日本語教師になられました。笈川さんは日本語を教えるときにスピーチで「伝えたいことを心を込めて」と教えるそうです。そんな笈川さんの教え子の方が大学を卒業して中国のテレビ局のレポーターになって東日本大震災で当時の日本の様子を中国に伝えていました。偶然それを笈川さんはテレビを見ていて見つけたそうです。その教え子さんは被災して家を流された中年男性に「今何が一番欲しいですか?」と尋ねたところ、その男性は「やっぱり人の心だな。温かい心だな。辛い。辛い一方なんだよな」と答えました。すると教え子は「おじさん、抱きしめてもいいですか?」と言いながらその中年男性を抱きしめていました。僕はレポーターが仕事から離れて、レポートされている人を抱きしめるのを初めて見ました。その教え子さんは「私にできることがあれば何かしたいと思って」と答えていました。笈川さんの教えなのか、その教え子の方の元からの温かい心なのか。理由はともかく感動して泣いてしまいました。そして何より笈川さんは知ってるはずの内容なのに放送の中でもその話をしながら映像を見てずっと泣いておられました。人の温かさに触れることができる今回の逆転人生でした。

2019年10月18日金曜日

水は方円の器に随う

水は方円の器に随う(したがう)

四角い器に水を入れれば、水も四角い形になり、丸い器に水を入れれば、水も丸い形になる。

中国の古典の韓非子にある言葉のようです。韓非子の解釈では「人も環境によって良くも悪くもなる」という意味のようです。一方で、禅の世界では「水はどんな形にもなれる」という柔軟性を表す意味だそうです。似ているようで少し違いますね。僕はこの禅の言葉の意味が好きです。状況に合わせて、どんな形にもなれる。これができれば人生がとても楽に生きられるのだと思います。

2019年10月11日金曜日

誰もその人の代わりにはなれない

自分なんて大した人間じゃないし、自分の代わりなんていくらでもいる。なんて思う時があります。でもそんなことはありません。よくよく考えていくと、どんな状況にあろうがその人は何か、誰かの役に立っている。誰もその人の代わりにはなれません。

2019年10月4日金曜日

臨床と勝負は違う

アスリートのテレビや本が好きでよく見ます。そこには自分を磨いて勝負に勝つまでの道のりがいろんな言葉を使って書かれています。自分を磨いていく、高めていくことは臨床をする僕も同じです。一方で、アスリートには対戦する相手がいて、その人よりも勝つことが求められますが、僕にとっては患者さんは勝たなければいけない相手ではありません。少なくとも患者さんはよくなりたい、楽になりたいと思っているため、言うならば同士や仲間みたいなものです。

ただ、一つ臨床でよく起こる現象があります。患者さんはご自身がすごくしんどい状態にいるため、時に治療者に対して一見すると敵意かと思えるような興奮した行動をとられることがあります。当初、僕はそれを患者さんから僕への敵意なのだと考え、それになんとか勝たねばならないと思っていました。しかしそれは間違いです。それは決して僕ら治療者に対する敵意ではなく、ご自身がしんどいということのメッセージです。それがわかるまでに僕は時間がかかってしまいました。でもそれがわかってからはそんな気持ちは消えて、臨床が楽になりました。