将棋や囲碁の勝負という世界と治療という世界は酷似しているように僕は感じています。先日の情熱大陸はそれぞれタイトルの永世7冠の羽生善治さんと2回7冠を達成した井山裕太さんでした。その中で後輩の井山さんが先輩の羽生さんに質問していました。
井山さん
どうしても勝ちたい一局に負けた時にどういう心構えでやっていますか?
羽生さん
勝った時も同じだが、前の結果の残像をいかに残さないで次の対局を迎えられるかがすごく大事。勝っても負けてもすぐに忘れて次に向かう。負けた時のいいところは今ある課題が明確になる。そこを見つめて考え直すことがでいる。それから、これまでの中で1年中カド番を迎える時があった。そうするとカド番に慣れてくる。ピンチや大変な状況に慣れてくることも大事なこと。慣れてくると、必要以上に緊張することもなくなる。
井山さん負けた時に燃え尽きることはなかったですか?
羽生さん
それはむしろ何かを成し遂げた後の方が、気持ちを続けていくことの方が難しい。
これらの井山さんの質問とそれに対する羽生さんの回答は非常に含蓄のある言葉であると思いました。
僕は自分の治療がうまくいかなかった時に、どうしてもそれを引きずって次の患者さんの診察にも前のうまくいかなかった患者さんの治療のどこがまずかったのかという考えを引きずって頭の中でそれを検索していまう時があります。それは今の目の前の患者さんにも失礼だし、僕自身も精神的にきつくなります。羽生さんの言葉は僕には非常に深遠な言葉に聞こえました。うまくいかない治療に向き合わず見て見ぬ振りをするのは治療者として論外だと思いますが、それに引きずられ過ぎて、患者さんや自分に悪影響を与えるのは良くありません。いかに自分の課題に冷静に向き合い、そして次の対局(治療)に挑んでいくのか。その大切さを30年以上プロ棋士をされている羽生さんから教えていただいた気がしています。
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